充電器やスマートフォンの仕様表には、SPR・EPR・PPS・AVSという言葉が並んでいることがあります。それぞれの違いと、充電器を選ぶときに見るべきポイントをまとめました。
- EPRが加わる前のUSB PDは100Wが上限で、EPRで最大240Wまで対応するようになりました。
- PPSは電圧・電流を細かく調整でき、AVSは中間電圧を細かく要求できます。
- 充電器を選ぶときは、PPS対応の有無とケーブルの60W/240Wロゴを確認してください。
USB PDとは?SPR・EPR・PPS・AVSの違い
USB PDには、SPR・EPR・PPS・AVSという4つの給電の仕組みがあります。EPRが加わる前のUSB PDは100Wが上限で、EPRで最大240Wまで広がりました。最新版は「USB Power Delivery Specification Revision 3.2 Version 1.2」(2026年9月14日公開)です。
SPR(Standard Power Range)
SPRは、EPRが登場する前からあるUSB PDの基本方式です。固定電圧はいくつかの段階があり、実際に使われる電圧や出力電流は、充電器のPDP(Power Delivery Power、電力定格)とケーブルの定格で決まります。具体的な電圧の段階は比較表にまとめました。
EPR(Extended Power Range)
EPRはUSB PD 3.1で追加された方式で、USB Type-Cケーブル・コネクタ経由で最大240Wまで電力を供給できます。SPRより高い固定電圧が新たに加わりました。電圧の値は比較表をご覧ください。
PPS(Programmable Power Supply)
PPSは、充電器の出力電圧と出力電流の上限を細かい単位で調整できる方式です。対応機器は充電中も必要な電圧・電流を繰り返し充電器に伝え、充電器はそのつど出力を切り替えます。刻み幅や調整できる電圧の範囲は比較表にまとめました。
AVS(Adjustable Voltage Supply)
AVSはUSB PD 3.1で導入された方式で、充電器が対応する電圧の範囲内で、受電機器が細かい中間電圧を要求できます。SPR・EPRのように数段階の固定電圧ではなく、より柔軟に電圧を合わせられる点が特徴です。具体的な電圧の範囲は比較表をご覧ください。
SPR・EPR・PPS・AVS 比較表
| 項目 | SPR | EPR | PPS | AVS |
|---|---|---|---|---|
| 最大電力 | 100W(EPR導入前の上限) | 240W | — | — |
| 電圧 | 5V・9V・15V・20V(PDPにより決定) | 28V・36V・48V(PD3.1で追加) | 5V Prog:3.3V〜5.9V 9V Prog:3.3V〜11V 15V Prog:3.3V〜16V 20V Prog:3.3V〜21V |
充電器の15V〜対応する最大固定電圧まで |
| 出力電流 | PDPとケーブル定格による | — | — | — |
| 刻み幅 | — | — | 電圧20mV/電流50mA | — |
| 動作の更新 | — | — | 少なくとも10秒ごとに電圧・電流を要求(Constant Voltageモードまたはカレントリミットモードで動作) | — |
| 導入仕様書 | — | USB PD 3.1 | — | USB PD 3.1 |
PPS対応機器の実例 — Google Pixel 9 ProとSony XQZ-UC1
PPSは充電器だけでなく、スマートフォン側の対応も必要です。ここでは公式情報で仕様が確認できる2つの実例を紹介します。
Google Pixel 9 Pro
Pixel 9 Proは、USB PD対応ACアダプター使用時にDC 9V/最大3A、USB PD 3.0 PPS対応ACアダプター使用時には最大DC 21V/1.5Aでの給電に対応します。EUの共通充電器指令に基づく供給電力範囲は7.5W〜27Wです。PPS対応の充電器を使うと、より高い電圧での給電が可能になります。Pixel 9 ProのUSB-C仕様の詳細はPixel 9シリーズのUSB-C仕様ガイドで解説しています。
Sony XQZ-UC1
Sony製のUSB PD対応急速充電器「XQZ-UC1」は、最大30WのUSB PD出力に対応し、固定電圧PDOとして5V/3.0A・9V/3.0A・15V/2.0A、PPSとして3.3V/3.0A〜16.0V/1.85Aを備えています。ソニーは、USB PD規格のPPS(Programmable Power Supply)により発熱を抑制するとしています。
ケーブルにも仕様がある — 60W/240Wロゴを確認
USB PDの仕様を最大限に活かすには、充電器・スマートフォンだけでなくケーブルの性能も重要です。USB-IFのケーブル電力定格ロゴは60Wと240Wの2種類が定義されています。60Wロゴは「USB Power Delivery 3.1 Standard Power Range」、240Wロゴは「USB Power Delivery 3.1 Extended Power Range」のUSB-IF認証テスト手続きにそれぞれ合格し、USB-IF Integrators Listに掲載されたUSB Type-Cケーブルにのみ使用が認められています。USB-IFコンプライアンスプログラムに合格するためには、すべてのUSB-C to USB-Cケーブルが、対応するデータレートおよび電力ワット数を示すケーブルロゴで表示されていなければなりません。ケーブルの選び方の詳細はUSB-Cケーブル選び方完全マニュアルで解説しています。
失敗しない充電器の選び方
- PPS対応の確認:スマートフォンの公式仕様にPPS対応アダプター使用時の条件が書かれている場合(例:Pixel 9 ProはUSB PD 3.0 PPS対応ACアダプター使用時に最大DC 21V/1.5A)は、充電器の仕様にPPS対応の記載があるかを確認してください。詳しくはPixel 9シリーズのUSB-C仕様ガイドをご覧ください。
- 必要なワット数を先に把握:機器に必要な電力(W)を確認したうえで充電器を選びましょう。詳しくはUSB-C充電器のワット数ガイドを参照してください。
- 100W超を狙うならEPR・240Wロゴのケーブルを:240Wロゴは「USB Power Delivery 3.1 Extended Power Range」のテストに合格したケーブルにのみ表示が認められています。60Wロゴのケーブルとは認証区分が異なります。
- ケーブルの表示ロゴを確認:USB-IFのコンプライアンスプログラムに合格したUSB-C to USB-Cケーブルには、データレートと電力ワット数を示すロゴ表示が義務付けられています。詳しくはUSB-Cケーブル選び方完全マニュアルをご覧ください。
- それでも充電が遅いと感じたら:充電器・ケーブル・ポートの組み合わせが原因のことがあります。USB-C充電が遅い原因の解決ガイドもあわせてご覧ください。
Sony XQZ-UC1
最大30WのUSB PD出力に対応し、固定電圧PDO(5V/3.0A、9V/3.0A、15V/2.0A)とPPS(3.3V/3.0A〜16.0V/1.85A)の両方を備えた急速充電器です。ソニーはPPSにより発熱を抑制するとしています。